発毛クリニックTOP > 新しい頭髪治療の研究 > 「男性型脱毛症の一卵性双子」の研究から我々が目指しているもの

「男性型脱毛症の一卵性双子」の研究から我々が目指しているもの

「もっと髪を増やすには…」その疑問と向き合って

男性型脱毛症は内服薬と外用薬によって改善が期待できる時代になりました。薄毛で悩んでいる男性には是非一度、専門医療機関の受診を勧めたいです。私は大学病院を中心に形成外科医として臨床、研究に取り組んでまいりましたが、縁あって現在は城西クリニックで、男性型脱毛症の専門外来に従事しております。



髪が生えてくる事への期待と不安、半信半疑の気持ちで通院を始めた患者さん達に、診察を重ねる毎に、髪と笑顔が増えていくのを目にすることができ大変嬉しいです。
治療の結果、髪が増えたら、患者さんの髪に対する気持ちはどう変わるのでしょうか?多くの方が、(ちょっとでもいいから)更にたくさん生えてほしい、と思うようになるようです。これは薬による治療効果が乏しいからではなく、薬でこんなに生えるなら、生活習慣を改めたり、髪に良い食品を摂取すれば、髪はもっと生えてくるのではないか、と希望を持つようになるからのようです。
結果として、患者さんの多くが、「もっと髪を増やすには、今の薬に加えて何かプラスになるものはないだろうか?」と考えるようになります。また、少数ではありますが期待したほどには髪が増えなかったという方がいらっしゃいます。その人たちも、「では今の薬に加えて、あるいは今の薬に代えて何か髪に良いことはないだろうか?」と考えるようになります。
患者さん達からの、この単純で真剣な問いに、明確にお答えできるように努める事は頭髪専門外来に携わる医師の責任の一つであると常々思っています。

男性型脱毛症は遺伝のみで決まっているのか?環境要因はどのくらい影響しているのか?

髪の毛は「皮膚」の構成組織(皮膚付属器)ですから、「皮膚にとって良いこと(悪いこと)=髪にとって良いこと(悪いこと)」、という理屈が成り立ちます。更に、「皮膚」が人体の最大の臓器であることを考えれば、「健康にとって良いこと(悪いこと)」=「髪にとって良いこと(悪いこと)」、という理屈も成り立ちます。そう考えると、適度な運動や、バランスのとれた食事、十分な睡眠、禁煙などは全て髪にとっても良いことと言えますし、実際にそのとおりでしょう。
しかし、ここで注意しなくてはならないことは、「髪に良いこと」と「髪が実際に生えてくること」、や「髪が減っていくのを遅らせること」の間には隔たりがあるという事です。禁煙や食事指導などの従来の生活指導をただ行うだけでは、患者さんの問いに「十分に」答えたことにはならないと思います。

これまでの研究で、男性型脱毛症の発症機序はかなりの部分が明らかになっており、その発症と進行に遺伝要因の影響が大きいことが明らかになっています。関連遺伝子の存在も既に複数、報告されています。一方で、男性型脱毛症が遺伝のみで決まっているわけではないこと、つまり環境要因の影響が無視できないことも知られています。過去の疫学研究の中には、アジア人において喫煙やメタボリック症候群(特にHDLコレステロール低値)が男性型脱毛症の進行に影響するという報告も見られます。

しかし、過去の研究を振り返っても、ある環境要因(例えば喫煙)が男性型脱毛症に影響するかどうかの結果は報告によって異なっています。「何が髪の毛にとって良いのか、あるいは悪いのか?そして、それらは薄毛に対して一体どれくらいの影響力を持っているのか?」は、いまだ未解決のテーマなのです。

「環境要因」の影響を調べるために一卵性双子の髪に注目

このことが、今回、私たちが一卵性双子に注目して行った研究につながっていきます。一卵性双子では遺伝子の塩基配列が完全に一致しています。一卵性双子の髪の毛に注目した時、もし髪の量なり、髪の質なりに違いがあったとすれば、それは、何らかの「環境要因」によるものだと言うことができます。我々は、クリニックのカルテを全て遡って、これまで診療してきた患者さんの中から一卵性双子の患者さんを探してきました。20組近く見つかった双子を、更に受診時期や、過去の治療歴(フィナステリド内服やミノキシジル外用の経験)で厳格にふるい分け、最終的に11組の双子を対象に、「双子間での毛の量の差」に注目することができました。その結果、遺伝的には同一の双子であっても、男性型脱毛症の進行状況や毛の量に差があること、また毛の量に差がある二人が1年の治療を受けた場合、1年後においても、やはり二人の間には毛の量に差が存在することを報告するに至りました。この成果については15th Annual Meeting of European Hair Research Society(イスラエル、2011年7月)で講演をおこない、学会賞「The Best Clinical Lecture」を受賞しています。

11組の一卵性双子に注目したところ、男性型脱毛症における環境要因の影響をはっきりと確認する結果となったのです。一卵性双子と男性型脱毛症という切り口では、過去にも報告があります。私が渉猟した限りでも、我々と同規模の双子数のものが2例、そして400組という大規模な報告が1例あります。いずれの報告も、男性型脱毛症における遺伝要因の影響の大きさを強調、報告する内容になっています。双子間に存在する毛量の差について注目し報告したのは、我々が初めてであり、このことが学会発表での受賞につながったようです。
話を、患者さんからの問いに戻しましょう。これまでの研究で明らかになっている「男性型脱毛症の遺伝率」や、「さまざまな環境要因のオッズ比」といった数字を並べても、患者さんはピンとこないでしょうし、「薬に加えて、髪の毛を増やすのに役立つものはあるのか?」という問いの答にはなりません。しかし、例えば遺伝的に同一の2人の頭部写真を目の前に置かれて(実際に外来でそういう事はしていませんが)、2人の毛の量に明らかな違いがあったら、なるほど、髪の毛には何かしらの「環境要因」も影響を及ぼしているのだ、ということが、より具体性をもって実感できるはずです。患者さんの立場に立てば、環境要因というものを軽視せず自分の生活習慣を見直してみようと思う動機づけになりえるのではないでしょうか。また、医師も、こういった事実を認識したうえで生活指導を行えば、その内容に重み深みが増してくるものと私は期待しています。

「どういう環境要因が、髪にどういう影響を与えるのか」がこれからの研究テーマ

今回の研究報告は、「環境要因と男性型脱毛症」という研究の入口に過ぎません。薄毛に環境要因が影響していることを再確認した今、「どういう環境要因が、髪にどういう影響をどれくらい及ぼしているのか?」が、次に取り組むべき研究テーマです。そして、これこそ、患者さんが一番知りたいことのはずです。

そこで、現在、各クリニックの先生方の協力のもと、男性型脱毛症と環境要因についての大規模な疫学研究を進めております。私が勤務する城西クリニックには12年以上にわたり男性型脱毛症の治療に専念してきた実績があります。大規模な疫学研究は、ある疾患に対して専門的に長期に取り組んできた医療機関でしか成し得ないものです。現在、私はその自負と責任感をもって疫学研究に取り組んでおります。

また、(時期尚早かもしれませんが)疫学研究の先には、「ではその環境要因はどのような機序で毛に影響を及ぼしているのか?」という研究も必要になってくると考えています。エピジェネティックスという概念が鍵を握っているのではないかと考えています。勿論、現時点で断定したことは何も言えませんし、これは私の想像の域を出ません。私が所属するFuture Medical Laboratoryには基礎医学を含め幅広い分野の医師、専門家が参加しており、こういった事の解明も近い将来可能であろうと確信しております。
男性型脱毛症と環境要因というテーマ一つをとってみても、深く追及していけば、いずれは新しい毛髪治療につながっていくものと信じて、日々診療、研究に取り組んでおります。

小山 太郎

■略歴
医学博士
Future Medical Laboratory 評議員
日本抗加齢医学会専門医
城西クリニック勤務

慶應義塾大学医学部卒業。同大学院で骨格筋再生の研究、
Brigham and Women's Hospital (Harvard Medical School)で遺伝子治療の研究に従事。
現在は頭髪外来の診療の傍ら毛髪研究に取り組み、最新の知見に基づいた診療を心がけている。

このページの先頭へ戻る


AGA(男性型脱毛症)と遺伝、環境要因の関係


HAIR MEDICAL

より詳しいサイトマップはコチラ